個人山行 ~ジャンダルムの天使に逢いに~ 西穂高岳から奥穂高岳テント泊縦走、白出沢ルートから下山 

【日にち】2023年8月11日(金)~13日(日)快晴

【メンバー】K口(L)、Y岡、S口、N西

【コースタイム】

◆8月11日(金)

1:30新穂高駐車場着・仮眠、7:00ロープウェイ―7:30新穂高駅―9:00西穂山荘

◆8月12日(土)

2:15西穂山荘―3:20西穂独標―3:50ピラミッドピーク―4:10チャンピョンピーク―

4:40西穂高岳―6:45天狗ノ頭―9:20ジャンダルム―10:50馬の背―11:10奥穂高岳―

12:15奥穂山荘

◆8月13日(日)

4:55奥穂山荘―6:00アビナイヨ岩―7:10荷継小屋後―8:20渡渉橋―9:15白出沢出合い―10:10穂高平小屋―11:00新穂高温泉センター

【メンバーの感想】

コロナ禍前より計画してようやく行けました。

台風6号と7号の合間を縫うように3日間とも晴天が続いて楽しむ事が出来ました。

行程はそれ程長くは有りませんが、登り下りが連発し、その中で鎖場やガレ場等気を抜けないルートが続きました。

これも、チームで声をかけ支え合い、時には笑いながら歩きました。

西穂山荘と奥穂山荘のテント場では今までに無いくらいにダラダラも出来ました。

緊張と緩和の山行になりました。チームの皆様お疲れ様!!(K口リーダー)

 

天候が心配されたジャンダルム山行でしたが、快晴に恵まれる絶好のコンディションで臨むことができました。

初日ののんびり山行と打って変わって、核心の2日目は1:00起床の2:15発。体力を温存しつつ核心部へ。

結果、全員が危なげなくクリアできた! K口リーダーの岩トレ等の賜物と言っても過言では無い。

S口さん、N西さんは心身とも充実しておられた。全員リラックスして臨める事に感謝します。皆様ありがとうございました!(Y岡)

 

                 ~超ハードながら、「今まで生きてて良かった」レベルの幸せな山行~

 随分前から、K口氏からジャンに行くよー!とお声掛けいただいていた。頂上の天使がどうのこうの、天狗?ロバの耳?馬の背?次々と現れる難所があるらしい。難所に備えて多忙な中、岩トレを何度も組んでいただいた。雨天になったら、室内のクライミングジムにも。岩をよじ登ることには慣れていったが、西穂高→奥穂高のコースのことを調べると「一般登山道ではありません。経験者向けの難ルートです。重大な遭難事故が度々発生しています。」とか書いてあって怖気付く。

 そうこうしているうちに当日は目前になり、益々心配になるので今ある不安要素を一つずつ消していくことにした。

⛰ココヘリに入る

⛰前夜車中泊、テント泊での睡眠不足を解消できるよう眠剤を処方してもらう

⛰12kg以上の荷物を担いで早朝三上山に登ること数回

⛰高地ですぐ充電のなくなる古い携帯を機種変更する

⛰荷物を軽量化。持ち物をもう一度見直して生きていられる最低限に絞る(臭くてもいい)

⛰不安はリーダーやメンバーに遠慮せず言う!・・・

やれるだけのことをやったら、あとはメンバーのことと自分のことを信じようと思えて覚悟を決める。

 

 いよいよ新穂高温泉に向けて出発。もう天候はダメかと思った台風6号と7号のハザマは晴天の三日間となった。山の神様ありがとう。早めに入った1日目西穂高のテント場では、良い場所を確保して体力を温存。西穂高山荘から奥穂高山荘までの難ルートを少しでも余裕をもって踏破するために2:15出発という経験したことのない前倒しの活動となった。結果この前倒しが功を奏した。涼しいうちに距離を稼ぎ、危険な場所での離合や混雑を減らす。何より時間に余裕があるので焦らず気持ちにゆとりが生まれた。切り立つ岩のアップダウンの繰り返しに余裕があったとは言えないが、前後をK口リーダーとY岡さんにはさんでもらって、安心して進めた。それにしても、落ちたら死ぬとこだらけの道中は緊張の連続だった。そこをほぼ標準タイムで踏破できたのは、私にしたら上出来。リーダーや同行メンバーのサポートのお陰であることは間違いない。

 最終日の降りは白出沢ルート。想像以上に厳しいコース(悪天候になったらすぐに通行禁止になるの

は必須)で、体力を奪われたがなんとか歩ききれた。天候に恵まれ、メンバーに恵まれ、体調も崩さず、ジャンダルムの天使に出会えた幸運にただただ感謝したい。(S口)

 

               ~ジャンダルムの天使に逢いに 岩場が苦手な私がジャンダルムに挑む 葛藤の日々~

 ジャンダルム:どでかい岩稜をさす言葉。子供に表現させれば「ちょうでかいコブ」だ。大人が言えば「近寄りがたい岩場」、正しい大人に言わせれば「決して近寄ってはならない禁断のコース」。このコースは一般登山道ではない。エキスパートオンリー。日本にあまたある山の中で、名前で脅し、力量で脅している究極のツワモノだ。葬式と密接にかかわっている岩峰といえるかもしれない。多くの命を飲み込んできた山である。それゆえの魅力がこの岩峰にはあり、そのために技術体力を鍛えて挑戦する夢を捨てきれない。もしこの岩峰の名前が、ジャンダルムではなく、例えば、ずんぐりした形を見て「丸山」と名付けなれていたら、これほど惹かれる山塊として我らをひれ伏し続けてこられただろうか・・・

 以前読んだ本にこのように書かれていた。まさか、自分がジャンダルムに挑むときがくるとは思ってもいなかった。

 

 「もしジャンダルムに行く時があれば、声をかけてください。」と軽い気持ちで言っていたら、ほんとにジャンダルムに行くことになってしまった~。ヤバいよヤバいよ(;'∀')

 金毘羅山Y懸尾根での岩トレでは、久しぶりの岩の感覚で取りつきから足が震えた。実践練習で予定していた釣り尾根から前穂高岳は悪天候のため中止となった。夏山集中の剣岳で自分の力量を確認したかったが家族がコロナに感染したため直前でキャンセルした。剣岳でかなりびびっているのに、更に難易度の高いジャンになど行けるはずがない、早く辞退を申し出しないと!と思っていた矢先に、K口リーダーから三上山での岩トレの案内がきた。最後の練習だ。S口さんはスイスイ登っていかれるが私は必死だ。私だけめっちゃ疲れている(^^;)こんな状態でジャンに行ったら迷惑をかけてしまうし、もしかしたら死んでしまうかもしれない。やっぱり私なんかが行く場所ではないんだ、辞退せねばと思ったが、S口さんに「不安なのは私もいっしょ。行かへんかったら心細いやん。」と言われ、その気持ちはめちゃくちゃよくわかるので覚悟を決めた。しかし動画を見るとやっぱりこんな場所ムリだと、大きな不安にかられ葛藤の日々であった。

 職場では8人中5人がコロナに感染し、私もいつ感染してもおかしくない状況であった。私が感染しなかったら、それは山の神様が応援してくれているのだと思うようにした。結果、私は感染しなかったが、台風7号が接近していた。K口さんから、台風の状況次第では双六岳と槍ヶ岳の周回に山替えするかもしれないと連絡がきた。確実に台風の影響を受けるだろうと思い、山替え確実だと思ったら一気に元気になった。ジャンに行かなくていいんだとほっとした。(^^) しかし、一向に山替えするという連絡はこなかった。覚悟を決めていざ出発。

 

 深夜に鍋平駐車場に着くと、無料駐車場は既に満車であった。有料駐車場で仮眠をして7:00のロープウェイに乗って西穂山荘に向かう。9:00から西穂山荘前の日陰で小屋番&瞑想&人間ウォッチング。いつもならせっかくたっぷり時間があるので近くの山を歩きたいなと思うが、今回は翌日のジャンのために無駄に体力を消耗してはいけないと考えじっとしていた(*^^)

 当初の計画では午前5:00登山開始であったが、台風の影響による天気の崩れとペースダウンを考慮して、出発時間が3:00そして2:00へと前倒しになった。気象予報士である西穂山荘オーナーの天気予報を聞いて、夕方6:00頃にテントに入り1:00に起床した。眠剤のお陰ですっきり起きることできた。見上げると満天の星が輝いている。準備を整え2:15登山開始。午後からは天気が崩れやすくなるため、他の登山者も早めに行動されていた。

 西穂高岳に着いた頃には陽が登り初めヘッドライトを外した。いよいよみちルートが始まる。激下りの後の狭い登山道、そしてまた一気に登る。高度感はあるが鎖もあるので歩ける。間ノ岳は浮石が多い。大きな岩でもぐらぐらする。その付近には私たちだけしかいなかったが、他の登山者がいれば落石に要注意だ。天狗ノ頭で奥穂高岳から歩いてきた登山者に出会う。互いを励まし合いながら歩きだす。なんといいお天気なんだろう。視界に入るのは実に美しい景色だ。心配していた逆層スラブも岩が渇いているので問題なく歩ける。随所に落ちたら死ぬところがあるが、狭いが足場もあるので丁寧に歩けば大丈夫だ。ルートを邪魔する出すぎた岩がやっかいだ。その岩でバランスを崩さないよう要注意。天狗のコル付近にくると少し人が多くなってきた。このような山で出会う人は皆同志だ。お互いの健闘を祈る。

 いよいよジャンが目の前にどんと構えている。今までの岩場歩きと大きくは違わない。一歩一歩しっかりと歩き進める。陽射しを浴びていないからだろう思ったより疲れていない。馬の背とロバの耳だけが一番の難所と思っていたらしっかり落とし穴があった(^^;)大きな岩と岩の間に人がすっぽり落ちてしまう隙間があり、めちゃくちゃ怖くてなかなか渡れない。後ろのY岡さんの「大丈夫、大丈夫。」の言葉に励ましされ何とか渡れたが、こんな場所があるなんて聞いてないよ~。

 9:20ジャンダルム登頂!エンジェルが迎えてくれた。山が幾重にも遠く重なり、想像をはるかに超える絶景だ。エンジェルの背景には槍ヶ岳が聳えている。釣り尾根の稜線もきれいに見える。他の登山者も登ってきて、皆が思い思いの写真を撮る。感無量。残すは最難関のロバの耳と馬の背を無事に通過するのみ。「ウマノセ」と書いてあったので分かったが、ロバの耳はどこだったのだろう・・・。気づかないうちに通過していたようだ。奥穂高岳の山頂はすごい渋滞だ。滋賀山友会のTシャツのお陰で声をかけてもらえる。梯子を下りて11:10奥穂山荘に到着。無事に到着できた!自分の力だけでは到底登ることはできない。山の神様、支えてくれたメンバー、全てのことに感謝しかない。

 テントを張り終えてほっと一息ついた頃から、奥穂のテント場は続々と埋まっていく。夕方になると場所がなくて、涸沢岳の登山道にテントを張る人もでてきた。改めて、早く歩き始めてよかったと思う。近くに来た若い外国人女性はテントを張らずシュラフのみで寝るようだ。どうやらシュラフカバーがいいらしい。夕食を済ませてテントに入る。翌日は4:00起床、5:00下山開始予定。事前情報によると白出沢ルートもなかなかのコースらしい(^^;)私はせっかくなので1時間早く起きて涸沢岳に登ることにした。

 3:00起床。テントから出ると今日も空いっぱいに星が輝いている。準備をして涸沢岳へ向かう。往復30分程度であるが、暗くて道がわかりずらくうろうろしていたら、北穂高岳に向かうという男性がこられたので付いていった。涸沢岳から北穂高岳への道も暗いのでわかりずらそうであった。

 4:00にテント場に戻りテントを撤収し、予定通り5:00下山開始。何とか駐車場まで天気がもってくれることを祈る。奥穂山荘を出るとゴロゴロした岩だらけの場所に出る。途中までは階段状になっているが、その後は浮石だらけで非常に歩きにくい。これは大丈夫だろうと思うような大きい岩もぐらつくので危ない。いっきに下ったので振り返ると奥穂山荘がかなり遠かった。「アビナイヨ」岩の近くには、前を歩いた人のであろう血痕が岩にべっとりついていた。ほんと、気をつけないとアビナイヨ。荷継小屋後を過ぎると暫く振りの登山道に入る。なんとも可愛らしいおこじょの子供に遭遇。暫しの癒されタイムであった。壊れそうな木の梯子をいくつか通過すると、白出大滝の流水音が聴こえてきた。ここからは鎖と梯子の連続だ。 鎖のお陰で安心して歩ける。そして絶景だ。台風がきているとは思えない快晴でとても気持ちがいい。重太郎橋も問題なく通過できた。白出沢ルートを登っていく人には脱帽だ。めちゃくちゃしんどいルートであることは間違いない。白出沢出合から林道に出て、穂高温泉センターでゴール!!からの鍋平駐車場までの道のりが辛い。皆が登ることに一所懸命になり、口をきくと息が苦しくなることを知って無言で登った。温泉に入っておそばを食べて帰路についた。

 

 “山登りで一番難しいのはね、登ることじゃない。登った山を無事に下ることだ。無事に下って初めて登山が成功するんだよ” K口リーダー、Y岡さん、S口さん、本当にありがとうございました。1回目の金毘羅山での練習の時から、絶対に私にはムリだと思っていました。連れていっていただいて、本当にありがとうございました。素晴らしい経験ができたことに感謝です。こんな私でも皆さんのお陰で登ることができました。どれだけトレーニングをしてもきっと不安はなくならなかったでしょう。動画を見て予習もしていきましたが、自分で登って経験したからわかることたくさんありました。山登りは一歩前に進めばいつかかならず頂上が現れます。誰に対しても裏切ることなく達成感を与えてくれます。行ってみたいな!と思っておられる方は、トレーニングをして是非チャレンジしてみてください。素晴らしい世界が待っていますよ(^^)

 

◆ジャンダルムの天使に逢うために私がやったこと

・靴を新調した。正解だった。しっかりグリップが効き、岩場も安心して登れた。

・ザックの背面パッドをシュラフマットの代用にした。元々どこででも寝られるので全く問題なかった。外付けマットは岩場では邪魔になったと思うのでよかった。そして軽量化できた。

・プールの階段の手すりを使って懸垂をして体力作りをした。岩場を腕の力で登ると体力の消耗が激しかったので、懸垂で上腕二頭筋と背筋を鍛えた。実際は狭いがちゃんと足の置き場があったので、腕力を使うことはほとんどなかった。(N西)