自然保護部 エッセイ
ほぼ一年ぶりに、朽木でのトチ巨木の調査が再開された。参加申し込みは11人だったが、直前の用事などで結局7人となり、2組に分かれて能家の谷に入った。国土地理院の航空写真をプリントアウトして、トチらしき樹冠を見つけ出し、その場所をGPSに落として谷の中を探しまわる。半分当てもののような、森の中で宝探しをしているような、時間と気持ちにゆとりがあれば、なかなか面白い活動だ。
前日に一生懸命目を凝らして「ここだ!」と思った地点に○マークを打ち込み、そこを目指して最初の枝谷に入った。航空写真でのトチの見極めは結構難しく、期待して見つめ続けると全てがそれらしく見えてきて困るのだが、今日の4本には自信があった。これは絶対トチだ!それもかなり大きい!!
谷がひどくえぐれている。昨年9月の豪雨の影響なのだろうが、あまりにもひどい。いやな予感がする。進むうちに伐採された枝の残骸がいくつも転がり始め、切り株に行きついた。
4本全てが切られていた。トチだけでなく、ヘリコプター搬出の邪魔にならぬようあたりの雑木もまとめて切られたらしく、谷中に木のない巨大な空間がぽっかりと広がっている。5月とはとても思えない30℃近い夏日の太陽が地面を干上がらせている。水はほとんど流れていない。わくわくとした気分が一気に萎えた・・。久しぶりの調査について行けていない足が、さらに重くなり、よろよろと尾根に這い上がる。伐採地より上は新緑の林。イワカガミやアカヤシオ?(普通のつつじより色が濃く、紫に近いピンク)の花が咲き、渡る風も涼しい。その極端な落差がまた悲しい。
この伐採跡を切った人に見に来てほしいと思う。元の谷に戻して欲しいと強く思う・・。
(MK記)