県連主催初級登山教室「クライミング実技③」大原・金毘羅山

日時:2024年5月12日(日)9:00 ~ 14:00 曇り後雨 
講師及びスタッフ:N森(山の会オフトレイル)、T内(山の会オフトレイル)、K口(滋賀山友会)、H谷川(滋賀山友会)
受講生: M代(滋賀山友会)、T成(滋賀山友会)、N堀(滋賀山友会)、N村(記録)
【報告】
今までのクライミング座学及び実技に基づき、実際に岩場にてシングルピッチ登攀、懸垂下降の技術を二組に分かれて学んだ。まず講師陣がリードで登り受講生がビレイを行う。続いて講師陣が終了点で支点を構築しセカンドビレイを行い、受講生がフォローで登攀を行う。受講生はそのまま終了点でセルフビレイをセットし、続いて懸垂下降のセットをバックアップ付で行い、実際に岩場を懸垂下降する。この動作を繰り返し行い、ビレイ・登攀~セルフビレイ・懸垂下降の手順・操作・注意点などを実践形式で学んだ。

1. 準備
岩場に到着したらまず初めにヘルメットの装着を行う。できるだけ岩場に背を向けないでハーネスの着用・クライミングシューズの履き替え等を行い、ザックなどが落ちないよう固定し、落下の危険があるところでは素早くセルフビレイを確実にセットする。
2. ビレイ
  まずお互いの装備を声出し確認でおこなう。次にビレイヤーはセルフビレイを適切な箇所で行えるよう、位置はクライマーの落下地点の真下に入ることは避け、なおかつできるだけ壁に近いところを選択するようにする。壁から離れたところから斜めにロープを張るとクライマーが落下したときに壁のほうにひきずられて衝突する危険がある。続いてビレイループにHMSカラビナをかけてビレイデバイスを取り付け、メインロープを通してビレイ態勢に入る。この時メインロープの向きに注意し適正にセットされていることを必ず確認する。クライマーが登り始めたら右手は常に右腰より下に配置し、クライマーの動きを確認しながらロープを繰り出していく。この時は絶対にメインロープから手が離れないよう注意しながら右手が腰より上にある状態はできるだけ短くなるよう素早く操作を確実に行う。クライマーが中間支点にヌンチャクをセットする際は素早くロープを繰り出して引っ張られないよう注意する必要がある。続いてクライマーからビレイ解除のコールがあればビレイ解除を行う。
3. 登攀~セルフビレイ
  ロープが引き上げられるのを確認しロープがいっぱいまできたら、ロープいっぱいとコールし、続いて登りますとコールする。テンションが掛かっているのを確認したら実際に登っていく。登る際はあまり手の力だけで登ろうとせず、足の置き場を常に確認しながら慎重に登っていく。できるだけ上半身を壁から離すと足の置き場がよく確認できるようになる。終了点まできたら素早く仮のセルフビレイをセットし、続いてメインロープを使ってクローブヒッチでセルフビレイをセットする。この際はよくムンターヒッチになりやすいので必ずクローブヒッチになっているかロープを実際に引っ張って確認を行う。
4. 懸垂下降
セルフビレイをセットしたのち、ロープを懸垂支点の真ん中にくるようセットをおこなう。次にロープの末端をオーバーハンドノットで確実に結んでからメインロープの振り分けを末端のほうから行い、残りを腕に振り分け2つに分ける。次に懸垂下降で降りる場所の確認をおこない、ロープダウンとコールし、支点側のロープの束から投げ下ろす。続いて同じようにコールしてから末端側の残りのロープを投げ下ろす。この時の注意点はロープダウンのコールをしてから少し間をおいて下に問題ないことを確認してから投げ下ろすようにする。次にバックアップをメインロープに取付け、確実に効くか確認し、続いてスリング等で延長したところにビレイデバイスをセットする。この時もビレイデバイスの方向に注意し制動テストを実施するようにする。懸垂下降の準備が出来たら、パートナーにもう一度確認してもらい下降の位置に着く。続いてビレイデバイスの下側のロープを強く引き、ロックした状態を保ったまま、セルフビレイを解除し下降を開始する。下降する際は、右手でバックアップを下げながら行うが、あまり強く握らないようフリクションヒッチの上のほうに手を軽く添えるようにするとスムーズに下降が行える。下降中はできるだけ後ろに体重を預け、壁に対して足が垂直になるよう、ゆっくり歩くように後方を確認しながら下降していく。着地したら一旦しゃがみ込みロープが引き上げられないようにし、ロープからビレイデバイスとバックアップを外すようにする。特に外す際にはビレイデバイスを落としたりするので必ずカラビナからロープだけを外すよう工夫する必要がある。
以上が一連の流れになります。今回の講習では2回繰り返し行いました。

 

 

  
 

 

 

 

一口感想】
 〈講師・スタッフ〉
★「今回は金毘羅・船でシングルピッチ登攀、懸垂下降の練習をしましたが、ルートをよく覚えておらず、終了点を取り直すなどして手際がよくなかったのは運営の反省点です。実際の岩場での講習は今年初めてでしたが、自然物相手ではなかなか型通りにいかず、戸惑うことも多かったのではないでしょうか?しかしそれだけに、繰り返し復習して原則的な安全の考え方を確実に身につけ、初めての場面でも適切な判断と行動ができるようにしてください。細かいルーティーンについては、今後段々と慣れていかれると思います。2点具体的な注意点として、ビレイヤーは、クライマーがロープクリップする際には、引きずり落とさないようクライマーが手を伸ばす前にロープを出すようにすることと、クライマー落下の際、ハングしていない斜壁では打撲・骨折等のリスクが大きいので、即刻ロックすることを心がけてください。」 (N森)
★「久しぶりの岩登りで緊張しましたが手順を思い出しながら上り下りしました。トップのビレイや懸垂下降はシステムとして自分の身体で覚えてください。私も手順を間違うことが良くあります。褒められることではありませんが間違った場合は道迷いと同じで早く気付いて正しい手順に戻ることが大切です。特に懸垂下降は間違いが取り返しのつかない事故につながります。懸垂開始時は必ずパートナーとシステムを確認しあうことが大切です。」 (T内)
★「初めて岩登りをされる方、恐怖心から何が何だかわからないまま時間が過ぎたかもしれません。少し経験された方は何もかもが曖昧なままで時間がすぎたかもわかりません。経験値高めの方は今までの常識が違って混乱されたかもわかりません。そんな時はみんなの集まる場で遠慮なく言ってください。コミュニケーションはクライミングだけではなく登山全般で大切です。技術、知識は大事ですが人間同士の信頼関係が最も大事です。信頼できない人にビレイを任せられません。なんてかっこいい事を言いましたが、とにかく迷った時は気軽に質問して下さい。お疲れ様でした。」 (H谷川)
★今回実技は初めてと言う事で皆さんの心配と緊張が伝わって来ました。慣れるまでは手順を覚えたり大変だと思います。しかしながら確実に覚えないと自分自身やパートナーを危険にさらす事になります。確実に覚え尚且つ体が自然に動く様に回数をこなしていきましょう。(K口)
〈受講生〉
★「平地にて事前に練習は行ったが果たして初めての岩場でシングルピッチ登攀と懸垂下降が自分にはできるのかと思っていたが、講師とスタッフの方々の大変親切で熱意のあるご指導のお陰で自分でも何とかできたことに感動した。懸垂下降でロープに振られたが慌てず体勢を持ち直して落ち着いて降りるようお声がけ頂いて気持ちを持ち直すことができた。パニックになることが一番危険だと感じたし、最初にこの経験をしたことでロープに振られる感覚もわかった。登攀中や下降中の色々なアドバイスや激励が大変助けになりますし、また写真や動画で自分のクライミングを振り返ることができとてもありがたく思います。」 (N 堀)
★「とうとう実地でのクライミング講習日。金毘羅山の『ふね』さんにご対面。緊張で、装備のセットに時間がかかりましたが、講師の方々の的確なアドバイスもあり、フォローとして2回登攀、懸垂下降も2回出来ました。途中、ぴりりと雨が来ましたが、無事講習終了。講習中は、各所作の注意点等を細かく指導いただき、ありがとうございました!」(M代)
★「懸垂下降ではフリクションを装着するのが初めてでしたので、操作が難しかったですが、安全を確保する上では必要なものだと感じました。ビレイヤーは雨が降り出したので1回しか出来ませんでしたが、左手の使い方を学べたと思います。」(T成)
★「色々覚えることが多く何度も反復練習しないと覚えきれないと思いました。ただ間違った場合はすぐに気づいて修正すれば大きな事故につながらないと思います。気づくことの大切さと必ず自分でどんなことも確認する重要性を強く感じた講習でした。」(N村)